保険まめ知識

第17回 マンションに地震保険は必要?

マンションに地震保険は必要?

マンションを購入する際、地震保険に加入するかどうかは、専門家ですら様々な意見があり、答えが出ていません。ほぼ強制加入の火災保険とは異なり、地震保険の加入は任意になるため、専有部分(自室)の保険をどうすればよいのか、お悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで、本特集では、「マンションに地震保険は必要か?」をテーマに、地震保険に対する考え方をわかりやすく解説をしていきたいと思います。

1. 地震保険の特徴

マンションにおける地震保険の必要性を考える前に、まずは地震保険とはどのような保険なのかを確認しておきましょう。

①地震保険は「最悪の状態」を避けるためのもの

地震保険の基本的な考え方は、「災害後、元の生活に戻るための補償」ではなく、「災害後、被害者が生存するための補償」です。そのため、地震保険の保険金は、食料の購入や引越し代など、被害に直接関係がないことにも使用することができます。その一方、地震保険によって支給される保険金は被害の一部にとどまるため、地震保険の保険金を利用して、新しいマンションを買う費用や、修理費用を全額補うことは困難です

②火災保険の保険金額の半額が限度額

地震保険は火災保険に付帯することができる特約の一種です。そのため、保険金額も火災保険が基準になります。例えば、火災保険の建物部分の補償が3,000万円の場合、地震保険の限度額は1,500万円。これは家財部分でも同様です。

③三段階の被害認定で保険金を決定

地震保険の被害認定は、全損、半損、一部損の3段階で、それぞれ保険金額の100%、50%、5%が支払われます。どの段階に被害認定されるかによって、保険金は大きく異なります。

④地震が原因となる火災、地盤沈下を補償するのは地震保険だけ

火災保険は、地震が原因となって起った火災・地盤沈下・浸水などの被害を補償していません。地震が原因となる二次災害を補償する為には、地震保険への加入が必要です。

つまり、地震保険とは、火災保険ではカバーできない地震被害に対して、その被害を部分的にサポートする保険である言えます。前述したように全ての被害を地震保険だけを使って回復させることは困難ですが、金銭的な不安がある方にとっては、震災後の生活の大きな助けになるでしょう。裏を返せば、住宅ローンの残高も少なく、新しく生活を立て直せるだけの貯金があるという方には、地震保険は必要ないと言えます。

これからマンションを新しく購入されるという方の多くは、住宅ローンを利用しており、被災後の資金に不安があるという人も多いはず。
それでは、なぜマンションの地震保険に、賛否両論が寄せられているのでしょうか。次のチャプターからは、マンションにおける地震保険を「建物部分」の補償と「家財部分」の補償に分けて、その理由を探っていきます

2. マンションにおける地震保険~建物部分~

被害認定の基準となるのは、「共用部分の主要構造部分」

マンションにおける地震保険~建物部分~

地震保険の補償のうち建物部分は、柱、はり、外壁など、マンションの根幹を支える「主要構造部分」への被害をもとに、三段階の損害評価を下します。この主要構造部分は、マンションの専有部分には存在しないため、基本的に共用部分を参考に被害認定が下されます(※1)。
ただ、マンションの構造上、共用部分と専有部分では被害が異なることも多く、共用部分が「全損」でも、専有部分も「全損」と認定されるとは限りません
専有部分の全損認定は難しいという専門家(※2)や、「マンションは地震に強い」というイメージもあり、マンションで地震保険に加入した場合、保険料の割りに支給される保険金が少ないという意見が聞かれます。

東日本大震災、仙台市内のマンションに支払われた保険金は?

それでは、実際に大震災が起った際、マンションの建物被害に対してどの程度地震保険の保険金が支払われたのでしょうか。NHKの報道(※3)によると、東日本大震災で被災した仙台市では、共用部分が「全壊」したマンションが100棟以上あったとしています。この「全壊」とは自治体が判断するもので、建物全体の50%以上に損害が出たことを示すもの。つまり、マンションにも地震によって大きな被害が出たということがわかります。しかし、NHKの取材によれば、被害を受けたマンションの多くは「一部損」と認定。バルコニーや高架水槽、エレベーターへの被害は、「主要構造部分」として考慮されず、住民には不満が残ったと言います。
上の例は、共用部分についてですが、専有部分も共用部分の被害が準用されることを考慮すると、建物部分で地震保険に大きく期待することは避けたほうがよさそうです。

自治体の基準をベースとするユニークな地震保険も

ただし、建物部分の地震保険の中には、自治体の罹災証明書(全壊、半壊などを証明する書類)を提出することで、保険金が支払われるものもあります。単独で加入できる民間の地震補償保険「リスタ」は、保険会社独自の認定方法ではなく、自治体の罹災証明書に基づいて保険金を支払うため、火災保険に付帯している地震保険よりも有利な保険金を受け取る事ができる可能性も。マンション本体が大きくダメージを受けるような震災に備えたいという人は、こちらの保険への加入を検討するのも良いでしょう。

≪ 単体で加入できる地震保険 ≫

地震補償保険 リスタ
地震補償保険 リスタ
単体で申し込むことができる、民間の地震保障保険。自治体が発行する罹災証明書を元に保険金を支払うため、保険会社のように主要構造部分でのみ判断されることはない。 建物部分を保障する保険がほしい人におすすめ。

※1 地震保険制度に関するプロジェクトチーム 第8回議事録 | 財務省 より

※2 人生最悪の災害が起こった時、命、家族の生活を守るために、地震保険は必要です。 | FPアンサーズ 鈴木 洋二氏の回答

※3 マンションを救えるか ~見直し迫られる地震保険~ | クローズアップ現代これまでの放送

3. マンションにおける地震保険~家財部分~

家財部分は、被害認定が出やすい

家財部分は、被害認定が出やすい

さて、前述した建物部分と比較すると、家財部分は被害認定の方法が大きく異なり、半損・全損の認定が出やすいとされています。家財部分では、専有部分の家財を家具や食器などに分類し、壊れたものをカウントしていく方法を採用。例えば家具が1つ壊れたのなら4%加算、パソコンが壊れたら2.5%加算され、全てを足した数値が30%以上なら半損、80%以上なら全損が認定されます。
特にマンションの場合、建物自体には被害がなくとも、揺れにより棚が倒れ食器が割れる、パソコンが落ちて壊れたなど、家財に被害が出やすいもの。建物部分と比較すると家財部分は保険金が支給される可能性が高く、買い替えや修理費用に不安があるという人は家財部分の地震保険に加入する必要があると言えるでしょう

まとめ

日本に住んでいる以上、どんな場所に住んでいたとしても大地震に遭遇する可能性が0とはいえません。例えば、南海トラフを震源とする東南海地震が30年以内に発生する確立は60~70%。さらに、東日本大震災のような予期されていなかった大地震が起る可能性もあります。地震保険を利用するかどうかの判断は人によって異なりますが、加入するにせよ、加入しないにせよ被災したときにどのように生活を立て直すか、しっかりと事前に確認しておく必要があるでしょう

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