県民共済のメリットとデメリット
公開日:
更新日:
病気やケガ、万一の死亡事故などへの備えとして、医療保険や生命保険と同じくらいに高い知名度を誇るのが「県民共済(正式名称:都道府県民共済)」です。
消費者主体の組織である生協が運営している安心感や、手頃な掛金などから高い人気を誇る県民共済ですが、メリットやデメリット、保険との違いや使い分け方などについては、あまり意識したことがない、という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「県民共済のメリットとデメリット」にスポットを当て、県民共済を検討する際に知っておきたい共済の基礎知識と、県民共済の活用法を解説します。
目次
県民共済とは
県民共済とは、おもに「全国生活協同組合連合会(通称:全国生協連)」が都道府県ごとに展開する共済(生命共済)のこと。運営するのは、全国生協連から委託を受けた39都道府県の生協組織(会員生協)で、これらを合わせて「都道府県民共済グループ」と呼ばれることもあります。
一般的には「県民共済」の名称で知られる都道府県民共済ですが、東京都では「都民共済」、大阪府・京都府では「府民共済」、北海道では「道民共済」、神奈川県では「全国共済(※)」と名前が変わります。
神奈川県では独立系生協による「かながわ県民共済」が別に提供されているため、全国生協連が提供する共済は「全国共済」の呼称となっている
県民共済のメリットとデメリット
県民共済のメリット
- 掛金が手頃
- 毎年の割戻金がある
- 医療保障と死亡保障を準備できる
- こどもが加入できるこども型、高齢の方でも加入できる熟年型、火災保険の代わりになる火災共済も
県民共済の最大のメリットは、なんといっても掛金(生命保険や医療保険の「保険料」に相当)が手頃な点です。月掛金の額は1,000円、2,000円、3,000円、4,000円など低めに設定されており、料金体系もシンプルでわかりやすくなっています。
これらの掛金は、共済金の支払いや事業運営などに利用され、剰余金が発生した場合には「割戻金」として各組合員に戻されます。共済は保険と異なり、組合員同士が資金を出し合って相互に助け合うためのシステムなので、営利は目的としていません。企業としての利益確保を優先する必要がないため、組合員に割戻される掛金の割合も多め。県民共済の場合も、受入掛金総額における割戻引当金の割合は29.2%(平成27年度決算)と、非常に高い水準となっています。
また、一つの共済で医療保障と死亡保障を準備できる点も、県民共済のメリットでしょう。医療保障は、病気やケガの際に必要となった入院・手術・先進医療の費用をカバー。交通事故や不慮の事故、病気における死亡保障や後遺障害保障も備えています。
その他にもこどもの入院やケガ、手術、第三者への損害までカバーするこども型、高齢でも加入でき、日帰り入院からケガの後遺障害、死亡保障までカバーする熟年型、火災はもちろん、落雷・風水害・地震などの風水害までカバーする新型火災共済等、商品ラインナップが充実している点も県民共済のメリットです。
県民共済の保障内容例(都民共済 総合保障型の場合)
保障内容 | 18歳~60歳 | 60歳~65歳 | |
---|---|---|---|
入院 | 事故(1日目から184日目まで) | 1日当たり 5,000円 | |
病気(1日目から124日目まで) | 1日当たり 4,500円 | ||
通院 | 事故(14日以上90日まで) | 通院当初から1日当たり 1,500円 | |
後遺障害 | 交通事故 | (1級)660万円~(13級)26.4万円 | (1級)500万円~(13級)20万円 |
不慮の事故(交通事故を除く) | (1級)400万円~(13級)16万円 | (1級)300万円~(13級)12万円 | |
死亡・重度障害 | 交通事故 | 1,000万円 | 700万円 |
不慮の事故(交通事故を除く) | 800万円 | 530万円 | |
病気 | 400万円 | 230万円 |
県民共済のデメリット
- 一定年齢以上になると保障が縮小される
- 加入するには該当する都道府県に居住または勤務している必要がある
- 保障は掛け捨てとなる
一方で、県民共済にはデメリットもあります。
ひとつめは、60歳や65歳など一定以上の年齢になると保障が縮小される点。県民共済の標準的なプランは、対象年齢が満18歳から満64歳まで(こども型は0歳から満17歳まで)となっており、契約者が満65歳以上になると高齢者向けプラン(熟年型)に切り替わります。熟年型は最長85歳まで保障の対象となりますが、標準プランも熟年型も、入院・手術時などに支払われる共済金の額は、年齢が上がるごとに少しずつ下がっていきます。
ふたつめは、加入可能な組合員が39の都道府県に限定される点です。県民共済は、該当する都道府県に住居(もしくは勤務先)のある方が加入対象となりますが、一部の県(山梨県、福井県、鳥取県、愛媛県、高知県、徳島県、佐賀県、沖縄県)には、県民共済を運営する生協組織がありません。そのため、転勤等で県民共済のない県に引越しをした場合などは、利用できないケースがあります。
3つめは、県民共済の保障が掛け捨てとなる点。一般の生命保険や医療保険には、毎月支払う保険料を積み立て、満期になった段階で戻ってくる貯蓄型の商品がありますが、県民共済の場合、保障期間は原則1年単位となり、期間中に共済金の支払事由が発生しない場合の保障は掛け捨てです(ただし、その年の掛金総額に対して共済金の支払い総額が少なかった場合は、前述の「割戻金」として還元されるため、掛金の全額が掛け捨てになるわけではありません)。
最後のデメリットは、県民共済には一部取り扱いのない保障がある点です。2019年2月時点で県民共済が取り扱う保障は、総合保障、入院保障(医療、がん、三大疾病は特約でカバー)、こども型、熟年型、熟年入院型、新型火災共済の大きく6種類。COOP(コープ)共済で取り扱いのある、女性向け(※コープ共済は妊娠している女性も加入可能)や終身医療、終身生命は取り扱いがありません。全ての保障を県民共済だけでカバーするのは困難です。
県民共済の活用法
働き盛りの世代は、県民共済をベースに足りない分の保障を民間の生命保険や貯金で備える
上記のように、県民共済には「掛金が手頃」というメリットと、「年齢などにより保障が一部限定される」というデメリットがあります。また、医療保障が充実している一方で、死亡保障はやや低めに設定されており、働き盛りの世代が万一に備えて準備する死亡保障額としては、充分でないケースもあるでしょう。
ただし、医療保障部分について見れば、県民共済は保障が手厚く、掛金も手頃。特に20代から50代のうちは、民間の医療保険と比較しても遜色がありません。そのため、県民共済で医療保障に備えつつ、足りない分の死亡保障については、それに特化した民間の生命保険などで備えるのも一つの方法です。
また、死亡保障よりも医療保障の優先度が高い方(専業主婦や子供など)は、県民共済のみで必要な保障をカバーできるケースも少なくありません。
60歳を過ぎたら保障と掛金のバランスを見て加入や継続の是非を判断しよう
60歳を過ぎる頃から、県民共済の保障は徐々に縮小されていきます。掛金そのものが大幅に増額するわけではないものの、60歳以前の保障内容と比較すると、掛金の割高感は否めません。
そのため、新たに県民共済への加入を検討する場合は、万一の入院・手術時等に受け取れる保障が、掛金に見合っているかどうかを判断することが大切です。もしも、ある程度の貯蓄がある場合は、共済や保険ではなく、貯蓄によって有事の際の備えを賄うのも選択肢の一つでしょう。
すでに県民共済に加入中の場合は、保障内容が変更になるタイミングで案内が届きます。新たに加入する場合と同じく掛金と保障内容のバランスをチェックしたうえで、継続の有無を判断すると良いしょう。
まとめ
県民共済のメリットとデメリット、いかがでしたか。
日本のほとんどの地域に展開している県民共済は、知名度も高く、加入件数も2,000万件超という、非常に規模の大きい組織です。
生命保険と似たシステムを持ちながらも、営利を目的としていない分、手頃な掛金で加入できる共済は、少ない費用で入院・手術などに備えたい場合に利用価値大。年齢による保障の縮小や、居住地域による利用制限などのデメリットを把握しつつ、家庭の保障計画の中に上手に組み込んでいきましょう。